カタカナ言葉の危うさ。

すでに語り尽くされている、今さらながらの話題ですが、最近ちょっと面白い事例に遭遇したので書いてみます。

インサイドセールスという言葉です。ネットで調べてみると、おおよそ次のような考え方のようです。

すなわち、営業活動全体をインサイドセールスとフィールドセールスという2つに区分し、社内外の様々なデータベース(たとえば団体名簿など)を使って不特定多数の潜在顧客から有望な顧客候補を選び出し、その顧客候補に対してメールや電話その他の非対面・非訪問の手法で情報収集や情報提供を実施し、さらに有望な成約見込み顧客を絞り込むまでをインサイドセールスと呼び、そこから実際に成約見込み顧客を訪問して最終的な成約まで持って行くのをフィールドセールスと呼びます。非対面・非訪問の手法だけで最終成約まで持って行くのもインサイドセールスと呼ぶようです。さらに言えば、ひとりの営業マンがこのインサイドセールスとフィールドセールスの両方を使い分け、自分の中でインサイドとフィールドを連結させ完結させてやっている場合もあるのに対して、インサイドとフィールドを完全に分離して異なる職種として設定している企業もあります。つまりインサイドセールスとは、多様な概念を含んでいる言葉なのですが、このカタカナ言葉のままでは、それが判りません。

そのため、ある企業では、従来型の闇雲な飛び込み営業ではなく、多様な情報を駆使して成約見込み顧客を選定し絞り込んで行って、徐々にアプローチする営業手法のことをインサイドセールスと呼んでいます。プロ野球の故・野村克也監督が言っていた「インサイドベースボール=考える野球」のイメージに近い解釈です。またある企業では、あくまで相手先を訪問しない非対面・非訪問の内勤者による営業のことをインサイドセールスと呼んでいます。極論すれば、電話勧誘です。またある企業では、訪問のための移動を伴わない、電話・メール・Web会議システムを用いた営業スタイル、つまりICTを駆使した営業のことをインサイドセールスと呼んでいます。それぞれ、微妙に異なっていることが判ります。言わば自社に都合のよい部分、自社がとくに力を入れたい部分だけに焦点を当てて、この言葉を使っているのです。

その結果、たとえば所属企業が違う2人の営業マンは、所属企業でのインサイドセールスの定義や認識が違うと、まともな意思疎通ができないということになってしまいます。とくに日本では、企業に所属する人々、良い言い方ではないでしょうが「会社人間」は、その会社独自の文化が社会全体のものと違う場合もあることを考えない傾向、あるいは自社特有の考え方が世間の考え方と同じだと思い込む傾向があるので、余計にコミュニケーションの妨げになる訳です。