昇格・昇任・昇進課題論文における自己評価

昇格課題論文などで、過去(これまで)の自分の実績を書けという趣旨の論題が出されることがあります。設問の一部にそれがあるという場合は決して少なくありません。その設問文を正直に受け取って、自分の昇格のための論文だからと、闇雲に実績を強調し、過大に、あるいは誇張して書こうとする方がおいでですが、それは論文と自分の評価を下げるだけです。

この問題を考える場合、論文評価を誰がやるのかということをまず考える必要があります。コンサルタントなど社外の専門組織に完全に委託されている場合は、自己評価は正当に、過不足なくきちんと記載すべきです。社外の第三者にも判りやすく自分や自分の部署の仕事を明快に説明したうえで(これが重要です)、自分の実績、業績を明確に書くのです。遠慮は要りません。多少のことなら、過大評価もありでしょう。

しかし、会社の上司や人事部などが論文の評価をするという場合、自分を誉めすぎたり実績を誇張したりすることは絶対に避けるべきです。そもそも、自己評価を書けと言いながら、会社はあなたの実績についてはすでに十分把握していて、その評価も定まっているのです。本人がどう主張したところで、それを変える可能性は極めて低いでしょう。たとえば人事担当者がその評価を変えるというのは、自分のこれまでの仕事を否定するか、それに少しミスがあったと認めるかすることと同じです。それでもあえて、論文で自己評価を書けと要求するのは、その社員が自分や自分の仕事ぶりをきちんと客観的に見ることができているか、それを試しているに過ぎません。それなのに、実績を過大に書いたり誇張したりする行為は、正直さや誠実さなど、自分の人物評価を下げるだけです。

事実を事実として書くことは当然ですが、その背景には「会社への貢献という意味では、まだまだ足りないが……」というニュアンスをにじませる姿勢が必要です。目標の8割がたは達成できたから、高く自己評価できると思っても、また実際それが多くの社員の共通の見方であったとしても、それで良しとする社員は評価されません。悲観的、否定的と思われるかも知れませんが、8割がたできたということは2割ができていないということであり、それはつまり完全には目標達成できていないということです。そういう視点、考え方、姿勢が求められるのです。

会社組織というのは、社員がどれほど大きな実績をあげたところで、それで良いと満足することなどありません。もっともっとと、どこまでも要求レベルはあがるのです。そもそも、昇格・昇進・昇任のための論文なのですから、これまでの実績で十分だという自己評価をするのであれば、そこで終わりです。昇格・昇進・昇任などあり得ません。